[ 桜 編 ]
「さくら」……、この響きに心躍らせる。 桜はなぜ、こんなにも人の気持ちを捕らえ、心ときめかせるのだろう。 桜を描きながらつくづく、他の花には無い、人間の生き死に通じるなにかを感じる。 それは決して美しいばかりのものではないけれど、そうであるが故に、逆にそのことが気持ちを軽やかにしてくれるような……。 桜の花びらの儚い散り際は、人の生き方にも例えられるが、そのはかなさを成立させている力強さをわたしは感じる。 桜は、花をつけていない時期に、その幹は白く見える。しかし、それが花を付け出すとたちまち黒く変化して、 そして満開の頃にそのコントラストは最大となり、その中で、はかなさは演出されて行く。 わたしは、花をつけるときに、この様に変化する幹を持つ花を他に知らない。 ただ単に、わたしの認識不足であるのかもしれないが、 桜のこの幹の黒くなってゆく理由に、あの花びらの淡い色彩に隠された秘密を思うのだ。 |
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